東京高等裁判所 昭和26年(う)1390号 判決
一、弁護人の控訴趣意第一点は原判決は不法に公訴を受理した違法があるというのであるが、所論のごとき事実は単に本件犯行の動機を要約して表示したものに過ぎないものと認むべきであり、かかる事実の記載は刑事訴訟法第二五六条第六項にいわゆる事件につき、裁判官に予断を生ぜしめる虞のある事項を起訴状に引用したものとは解することができないからこの点の論旨も理由がない。
二、弁護人の控訴の趣意第二点は、原判示第一の事実につき原判決が強盜の点のみについて刑法第六〇条を適用したのは法律の適用を誤つたものであり、原判決には理由不備若しくは理由にくいちがいがある。というのであるが、強盜強姦罪は強盜の身分あるものが強盜の機会に婦女を強姦することによつて成立するものであつて所論のごとくいわゆる結合犯ではあるが、強盜罪の結果的加重犯である強盜殺傷罪とは異なり、強盜の点についてのみ共謀の事実があつたからといつて、強姦の点について共謀なき者にまで強姦の責を負わせることはできないのである。したがつて数人が共謀の上強盜罪を犯し、その際その内の一人が他の共犯者と共謀することなく婦女を強姦したときは単にその者のみ強盜強姦罪の責を負うべきは当然であつて、この場合強盜の点については他の共犯者のなした行為についても責任を負うこと勿論であるから、その点につき刑法第六〇条を適用すべきこともまた疑なきところである。されば本件において強姦の点については各被告人間に共謀の事実なき以上強盜の点についてのみ刑法第六〇条を適用したのはまことに相当であつて、原判決はこの点につき法律の適用を誤つた違法もなく、もとより理由不備若しくは理由にくいちがいがあるものとはいうことができない、この点の論旨もまた理由がない。